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メルヘンハウス覚王山 ​ (愛知県名古屋市千種区) 
完成 : 2021年8月

今と昔をつなぐ色

2018年3月に45年の歴史に幕を下ろした日本初の児童書専門書店であるメルヘンハウス。

2021年8月、庭とスキップフロアの空間を持った覚王山のテナントにその拠点を移し店舗再開をすることとなった。

今回、既存内装はそのまま残し、絵本に欠かすことのできない本棚のデザインを行なった。

メルヘンハウスが昔から大事にしている面出し陳列に重点を置き、その他必要な冊数は棚差し陳列で補う形とした。棚板は平行して同じ高さに設定し、視線の上下運動を極力減らすことで本と対峙することに集中できる状況を提供している。また子どもの成長によって手が届く範囲が変わることで、同じ棚の中で絵本をシームレスに幼児用から高学年用へ移行させている。

面出し本棚は幕板に、棚差し本棚は構成している仕切り板に着色を行っている。その色は昔のメルヘンハウスの本棚で使われていた「青、黄、緑」とGOGOメルヘンハウスで使用された「青、赤」をビビットに置き換え、着色している。様々な時代の流れの中、変わることへ挑戦している新しいメルヘンハウスと、どの時代においても変わることのない本質的な絵本や子供との関わり方を持つ昔のメルヘンハウス。この両者が共存した場所のアイコンとして機能してくれたら嬉しい。

今回のテナントは面積が限られているため、以前の店舗のように3万冊を取りそろえるような書店にはなりえない。この書店は店主が厳選したタイトルを時期時期に合わせて刷新していく新陳代謝が活発な新しいスタイルの店舗である。そのため店舗の内装も未完全から徐々に足りないところを補っていくスタイルを取っている。平台が必要であれば平台をデザインし、フリースペースとしている2階を店舗として運用したい場合は新たに本棚を設け、庭で絵本の読み聞かせをしたい場合は庭に滞在することができる要素を作り出す。来るたびに新しく生まれ変わっていく書店を店主とともに目指している。
 

子供にとって1冊の絵本との出会いは、その子の考え方を変えてしまう力を持っていると思っている。その絵本との出会いが商品として陳列された量販店ではなく、しっかりと絵本と向き合い、言葉に想いを乗せて手渡してくれるメルヘンハウスから受け取って欲しいと思っている。この空間が絵本を受け取った思い出の中の背景として、子供の記憶に残ってくれたら嬉しく思う。

用途 :児童書専門書店(木製本棚)

写真 : 植村崇史写真事務所 植村崇史

​メルヘンハウスHP:https://meruhenhouse.co.jp/

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