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割塚の家 (愛知県)
完成 : 2020年
小さな家の大きな吹抜
駅近くにある南北に長い間口5m約17坪の狭小敷地に計画する分譲建売住宅。
現在は東側のみ隣家が建っているが、駅が近いこともあり、東、北側の隣地もいずれ建物が建つことが予見される場所である。その中で唯一変わらず信頼できるのは道路がある南側という敷地であった。
このような狭小敷地に建つ狭小住宅の場合、最大建築面積を層で積み上げ、目いっぱい床面積を取るのが分譲建売住宅の一般的な考え方である。しかしその限られた一層の床面積で得られる空間はどこか窮屈さを感じてしまうのではないかと思う。さらに間口5mでは住宅は南北に長くなり、東西の近接した境界線により東西に窓を設けることが難しく、余計に北側の部屋は暗さを感じてしまうのではないかと考えた。
そこで南の光を家全体に行きわたらせるように建築面積の1/5を割いて1階からロフト天井まで貫いた吹抜けを設けた。この吹抜けは採光、通風にとどまらず上下階や外とのつながりを作りだす。ここで生まれた光、風、拡がりは床面積を優先していては得られることができない。またこの吹抜けが作り出す上下階を縦断するコミュニケーションは立体的であり、視線の交錯、会話をするたびにこの住宅の拡がりを感じるのではないかと思う。
分譲建売住宅の特徴は実際に建っている住宅を見て購入することができる点である。万人に受け入れてもらえる住宅が「売る」という意味の中では重要視されている。しかしそれではマーケットの中だけで住宅を作ることになってしまい、個室が何部屋あるか、それぞれ何畳あるかという数字に置き換わる部分に価値が集中してしまう。そうではなく敷地の可能性をしっかりと受け止め、住宅に寝食以上の価値を見出し、1家族でも住みたいと感じてもらえる住宅を作る。住宅として、購入する住人にとって、そういった理念を持った分譲建売住宅があってもいいのではないかと考えた。