【家に愛着を持つ上で大切な変わらないものとは】
ROOM407というマンションリノベーションには、用途のない空間が存在します。用途がないというと無駄な空間のように感じますが、その空間こそが、家に愛着を持つ上で大切な変わらないものとなっています。用途のないその空間を僕たちは通り部屋と呼んでいます。一般的なマンションの間取りは南に居間、北に個室、その間に水廻りや廊下といったように南と北の光や通風の上での環境の差が存在しています。それを解消するべく京長屋の通り庭から着想を得たのがこのROOM407、通り部屋です。
【環境を正す】
この通り部屋は、南北に配置されていた掃出しの引違窓を貫通するように存在しています。それにより通風が確保され、南からの光も北側まで届けることが可能になっています.それにより南北の環境差は限りなく小さくなり、家として住み心地がいい空間になっています。
【伸縮する空間】
通り部屋の特徴はそれだけではありません。この通り部屋には隠れた二本の建具があります。それを開け閉めすることで空間が伸縮し、様々な状況を包括することができます。大人数が集まって居間にスペースが必要な場合には、建具をすべて開けて家全体が居間として機能します。プライバシー性を持って就寝したいときには、ベッド側の建具を閉め寝室として利用することもできます。すべて独立させて寝室、書斎、居間というように分けることもできます。建具を閉めたときにもアクリルにより光は北へ届けられ、オープン欄間により風は北へと抜けてきます。ここに書いた使い方以外のも様々な状況の中で変化することができ、このような柔軟性は、家族のニーズに合わせて空間を最適化し、快適な生活を送る上で非常に有益です。
【建築家の家に込める愛着ってなに?】
ROOM407の通り部屋は、住む上でとても重要な光、風、柔軟性を得るために必要な大黒柱的存在です。目に見えるものだけが愛着を持つためのアイデンティティになりえるわけでなく、こういった何もないからこそ家族の日常を豊かにし、生活の質を向上させるということもあります。建築家の家は住みづらい、快適性がないということは一切なく、むしろそれこそ住まいの本質であると考えています。
設計をお考えの方は、抽象的でいいので、何を大切に生きていきたいか考えることが愛着を持つ住宅と暮らす第一歩だと考えています。
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